プライベートシェフ

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アメリカに来てすぐの頃でしたが、ひょんなきっかけから、知り合いにプライベートシェフをしてみないかと持ちかけられました。こちらに来て間もなかった私は、仕事があるなら是非したい!とノリノリでその仕事を受けました。

紹介してくれた知り合いは、後で知ったのですが、カリスマヘアメイクアップアーティストとして、本も出しているようなちょっとした有名人でした。そして依頼主はアメリカ、日本、韓国にネイルショップを経営されるかおりさん(仮名)。ヘルシーな日本食をかおりさんとそのご家族の旦那さんと娘さん計3人に作って欲しいとのこと。初日面接のあと、ビバリーヒルズのご自宅へ伺い、一緒に日系マーケットへ行ってから実際に料理させて頂きました。

早速、次の週から料理を作りに行くことに決まりました。家族3人の夕食と次の日の娘さんのお弁当も作り、一回$25。月曜から金曜の週5回。買い物から最後の片付けまで、通勤時間も考えると、約3時間はかかりました。アメリカに来たばかりで、右も左もわからない中、仕事にありつけただけでもありがたいと思って、一生懸命毎日メニューを考えて作っていました。料理は美味しいと気に入ってくださり、近所のお友達の方もご紹介頂いて、好評でした。紹介して頂いたのは嬉しかったのですが、食の好みが全然違って、結局別のメニューを作らなければならず、時間と手間がかかる割には、報酬は比例しないなぁと少し疲れてきていました。
そんなある日、アメリカに長く住んでおられる方に、それ、ボランティアでやってるの?普通は$100くらいはもらえるわよ。その人、本当にお金持ちなの?」と言われ、えっ?!そうなのっ?と驚きました。
アメリカに来たばかりで、プライベートシェフの平均プライスも知らなかったですし、食材の違いなども勉強になるし、ご家族に喜ばれるよう、毎日思考錯誤しながらやっていた中でした。ちなみに、日本での料理の経験は11年ありますので、そんなに間違った物は作っていなかったと思います。かおりさんは私の事を気にいってくださって、出会った日から、私の店をオープンすると言い出して、そしたらビザなんて簡単に取れる、アメリカに来てすぐ私に出会うなんて本当にラッキーよ、アメリカンドリームだわ、あなたもミリオネアの仲間入りよと言っていました。お店を出すならNYスタートにしましょうと、毎回いかにも本気で飲食店をだすつもりであることを言っておられ、私もアメリカでお店が出せるならば、やってみたいと思っていました。

そして、一時日本で流行ったデコロールの店をオープンすると言い出され、試作でケーキを何個も何個も作るように言われました。バレンタインデーには100個以上のケーキをかおりさんのネイルサロン4店舗に配るように言われました。自分の自宅で仕込み、丸2日ほどは制作に追われ、バレンタインデーはひとりで配達にまわりました。ケーキの原料費だけ頂きましたが、あとは試作していた期間もすべて無報酬で、ガス代もでませんでした。

その後、急にやっぱりサンドウィッチ屋もいいわねと言われました。ハワイにカフェをオープンしましょうと言われました。夜中の12時に呼びだされ、料理するように言われた事もありました。だめだ……口車に乗せられて、振り回されるばっかりだ…他に仕事も見つかったので、プライベートシェフを辞める事にしました。かおりさんは、お金もあるし、ある程度の自分の夢を実現させたし、周りの人から尊敬されておられ、いつも夢をみさせる話すれば、下の人間は無報でほいほいついてくるのかもしれません…。一時は店を出すのを夢見た私ですが、私はそんな夢見る若者になるには、少し年を取りすぎていて、どうも話がめちゃくちゃで信用性に欠けるので、これ以上はついていけなくなりました。アメリカンドリームなどと言われ、他人の力を借りて自分の店がオープンできると思ってしまったのが、そもそもの間違いだったと思い、反省しています。

かおりさんは誰にでも笑顔で接し、好イメージを保たれており、悪態を憑かれるような人物ではありませんでしたが、実際そのネイルショップで働いていた子たちは、労働環境や賃金に不満を漏らしていました。

プライベートシェフを辞めて何か月か過ぎた頃、かおりさんと当時親密な関係なあった方が経営されている、ハワイにあるホテルのシェフの仕事をご紹介頂いたのですが、あまりに不安要素を感じ、お断りさせて頂きました。「これを断ったら、もう絶対ビザなんて取れないんだからね。」とかおりさんは怒って言われました。(後ほど他で取れたんですけど)

ロサンゼルスには、沢山お金を持っている日本人が結構いらっしゃいますが、労働に見合った報酬を払うアメリカ人のお金持ちとは違って、格安の賃金で労働力を得ようとする方が多いですので、気をつけなければいけません。日本人の性質上、全部ハイハイという事聞いていたら、ただの下僕になってしまいますので、自分が嫌だと思う事や、それはおかしいと思う事は、「NO」とはっきり言うようにしていかなければならないと、プライベートシェフをしてみて学びました。

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