私が今年読んだ本の中で最も印象に残っているのが『孤独の科学』(ジョン・T・カシオポ/ウィリアム・パトリック:著、柴田裕之:訳、河出文庫)である。印象に残った点を3つ挙げよう。
私たちが第二、第三の彼らにならないと言い切れるだろうか。私にもついついムキになって他人を必要以上に攻撃・批判してしまったことがある。振り返ってみると孤独や寂しさが原因となっていたように思う。
人は孤独だと攻撃的、批判的になる。自分がいつも以上に攻撃的・批判的になっていることに気づいたら「自分は今とても孤独を感じているのかもしれない」と客観視することで、それ以上常軌を逸することへの抑止力となるかもしれないし、対策を講じることもできるかもしれない。
同時に、他人の攻撃性にも寛容になれるかもしれない。
集団の仲間に入れて欲しいと思う動機となるのが「孤独感」である。だけど「仲間に入れてよ」「うん、いいよ、よろしく」なんて風にうまくいくわけがない。そのまま孤独感に突き動かされてゴリ押ししても望みはない。
そこで「一歩退いて、冷静に考える」のが抑うつ感の役割である。一歩退くことによってエネルギーを温存すると共に「私は脅威ではない」ことを相手に示すことができる。冷静に考えることによって「贈り物をすれば仲間に入れてもらえるかもしれない」と思い付くかもしれない。
そして、深刻な抑うつ状態は「助けてください」というシグナルにもなり得る。本書でよくわかることは、抑うつ状態はエラーなどではなく、社会関係におけるリスクを最小限に抑えるための合理的な機能のうちのひとつであるということ。
この考えに基づけば、うつ病の人は「私はあなたたちにとって脅威ではないから助けてくれ」ということを暗に訴えているわけだから、彼らを決して攻撃してはいけないのだと思う。
近代国家とインターネットによって人は人と必要以上に繋がらなくても必要最低限の生活を維持して生きていけるようになったように思う。だけど、人は結局はなんやかんや言っても「つながりたい」のだ。
本書はその「つながりたい」と「孤独」の狭間を科学という冷徹な目で分析しながらも、それらを優しく捉え直して孤独への処方箋を批判なく提示する稀有な本であると思う。
「人は一人では生きていけない」という言葉を私はお金や何らかの援助のことを言っているのだと思っていた。だけど、今ならわかる。「人は一人では生きていけない」にひねりはない。つながるのが人間の本質だという単純にして重要な事実のことを言っていたのだと気づいたのだった。