北海道砂川市にある唯一無二の書店 / NHK『プロフェッショナル仕事の流儀』で紹介された『一万円選書』の書店、店主の言葉

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2018年4月23日、NHKの『プロフェッショナル仕事の流儀』で北海道砂川市のとある書店がとりあげられた。
http://www.nhk.or.jp/professional/2018/0423/index.html

書店の名前は『いわた書店』。
ご主人が岩田さんなので、いわた書店。
父親の代から始まり、岩田さんは二代目の店主になる。

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一見してわかる通り、まちの小さな書店だ。
そんな小さな書店が、なぜ、『プロフェッショナル仕事の流儀』で取り上げられたのか。

『一万円選書』

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皆さんは『一万円選書』という取り組みを耳にしたことはあるだろうか。
A4用紙3枚分の『カルテ』と呼ばれる質問票に答えて、いわた書店に送ると、約10,000円分の書籍を、店長の岩田さんが選んで送ってくれるというサービス。

かつて、書店は本を入荷すれば売れる時代だったが、近年、本離れが進み、本が売れない時代になってしまった。
特に地方の書店は、その影響を強く受け、廃業に追い込まれてしまうことも多い。
岩田さんご自身も、経営が厳しく、一度、本気で廃業を考えたとのこと。

そんな折、岩田さんは、先輩から、1万円を渡され、これで本を見繕ってくれと言われた。

1万円を手渡された時、先輩に本を選ぶということに責任とやりがいを感じると共に、岩田さんの中で、『一万円選書』というアイディアが生まれた。

今となっては、年間約3,000件もの応募が寄せられるまでになり、一時、受付を停止し、定期的に募集して抽選で当選した方にのみ、選書を行っているという人気ぶりだ。

『一万円選書』のカルテとは

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『一万円選書』に応募した際、応募者は、カルテという質問票を作成する。
岩田さんが選書を行うのに、欠かせないツールだ。

何より、その質問内容が、とても面白い。

『これまでに読んだ本で印象に残っている本BEST20は?』
『これまでの人生で嬉しかったこと、苦しかったことなど自由に書いてください』
『何歳の時の自分が好きですか?』
『自分は上手に年を取ることができると思いますか?』
『これだけはしないと心に決めていることは何ですか?』
『あなたが一番したいことは何ですか?』
『あなたにとって幸福とは何ですか?』

どれも正解がない質問だが、答えていくうちに、応募者の人生がカルテ上に浮き彫りにされる。
カルテを通して浮き彫りになった個と向き合って、選書は行われている。

なぜ、『一万円選書』にこれほどの需要が生まれたのか。

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通常、書店はいわゆるベストセラーや、ゲームの攻略本など、売れる本を書店に並べる。
お店として、収益を上げるために売れる本を並べるのは、当然のことだ。

しかしながら、いわた書店の本の並べ方は違っている
岩田さんが読んだ本の中から、読んでもらいたい本を仕入れて、ご自身で店に並べている。

『自分で売る自信がある本を置いている。』

そう、岩田さんは言っていた。

岩田さんは現在、66歳。
66歳になった今でも、年間約160冊の本を読んでいる。
66年×年間160冊の本の中から、一万円選書のカルテと向き合い、送り主に読んでほしい本を選んでいる。

積み重ねられた歳月と寄せられるカルテが、応募者の心に届く本選びに繋がり、応募が絶えないのだと感じた。

いわた書店の返本率

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ところで、皆さんは、返本率という言葉を聞いたことはあるだろうか?

今日の日本では、岩波書店のように買取制をとっている一部の出版社の書籍を除いて、多くの書籍は出版社か> らの直販ではなく日販やトーハンなどの取次店を通して流通し、書店に販売が「委託」されている。再販制度> のもとでは書籍の販売価格と卸価格はあらかじめ定められているから、書店は実売数に応じて一定のマージン> を得るが、書籍が売れ残った場合、取次店に自由に返品できる。取次店は新しい書籍を配本する際、全国の書> 店の分布やそれまでの同傾向の書籍の販売実績をもとに書店ごとに配本数を定めている。しかし、個々の書店> に配本された書籍が購入されないまま委託期間を終了し、返品されるケースも多い。
〈wikipediaより引用〉

今日では、販売委託制度により、書店は通常、取次店を通して書籍を入荷し、書店に販売が委託され、売れ残った書籍は、取次店に自由に返品できる。
その返品した書籍の割合を返本率と呼んでいる。

皆さんもよく耳にする三省堂、紀伊国屋書店などの返本率は約4割。
それに対し、いわた書店の返本率は、わずか1割。

『自分で売る自信がある本を置いている。』

そんな、岩田さんの仕事が、返本率1割という数字に表れていた。

年に何度か、大手書店の書店員の方が、研修のために、いわた書店を訪れるそうだ。
その際に、書店員の方が口にした印象的な言葉がある。

『私も、こんな仕事がしたかった』と。

おわりに

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今回、私は、岩田さんの生きた言葉を聞きたくて、直接、いわた書店に足を運んだ。
色々お話を伺っていた折、岩田さんが、とある雑誌に寄稿した文章を見せてくださった。

一節を要約すると、

『人は年をとれば、自らの限界が見えて、色々とあきらめるようになっていく。
そんな中、私は66歳にして、ようやく、自分がやりたい仕事を見つけることができた。』

本が売れない時代に、一時、本気で廃業を考え、
でも、あきらめず、
『自分が面白いとおもう本を売る』という信念を貫き通し、
『一万円選書』を通して、人の心に寄り添う、書店店主の言葉。

その言葉がどうしても、脳裏から離れなかった。

岩田書店公式ウェブサイト
http://iwatasyoten.my.coocan.jp/index.html

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