ピアノ椅子と日本の林業

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僕のピアノ椅子がいたんで、どうしようもなくなったので修理しました。

以前座る部分の皮が破れたのですが、これは自分で修理しました。

でも、今回は木がすり減ってきました。

痛んだのは高さを調節する部分なので、揺れるし、軋むし、危険です。

買い換えることも考えましたが、1982年にアメリカから一時帰国したときに買った椅子で、それ以来36年間ずっと使っていたので、愛着があり、捨てることができませんでした。

僕は、痛んだ部分の木を外し、奈良の商店街で見つけた木工芸品のお店・やまからなさんに持って行きました。

そして、同じ形に削った木を作ってくださいとお願いしました。

奈良県の吉野の木材は、吉野桧・吉野杉と呼ばれとても有名な銘木です。僕は、桧でつくってもらうことにしました。

やまからなさんは快く受け付けてくださり、木を削って送ってくれました。

1枚板の桧がぴったりとはまって、最高の椅子ができました。

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やっぱり職人さんのお仕事はいいなあと思って、吉野など、日本の木材について調べていると、そこにはとても大きな問題があることがわかりました。

今、日本の木材自給率は約18%だそうです。

でも実は、日本には使っても使い切れないほどの森林、使わなければならない森林があるそうです。

海外の熱帯雨林では乱伐や違法伐採が問題となっていますが、日本の問題は少し違っています。

日本人が木材を得るために作ってきた人工林(育成林)が、現在、輸入木材の自由化などによって国産木材の需要が低くなったため、林業の人手がなくなっているのだそうです。

手入れをする人のいなくなった人工林は、サイクルが切れて荒廃し、山が保水できなくなり、土砂災害の原因にもなります。500年の歴史を持つ吉野の林業も、現状は厳しいそうです。

今僕が住んでいる家は、80年前の家なので、木材がふんだんに使われています。今は梅雨ですが、湿り気もなく、とても快適です。そして今は、ピアノの椅子から、桧の香りが、だいぶ薄くなりましたが漂っています。

偶然選んだ吉野の木でしたが、日本の林業と、木と共存してきた日本の文化が迎えた危機、そして日本の自然が迎えた危機に対して何ができるのかと考えるきっかけになりました。

みなさんもぜひ、お箸やまな板からでも、国産の木材に触れてみてください。

ピアノ椅子の修理は、買うよりもずっと安くつきました。

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